【医療・リハビリ職種向け】患者さんの痛みの「なぜ?」を解決!

怪我の痛み イラスト

こんにちは、せるとれです!

今回は医療・リハビリ職種向けに痛みについて解説したいと思います。

患者・利用者・家族・友人など、いろいろな人から聞かれる痛み。医療職種なら必ず耳にするワードです。ましてや、医療職に頼って、誰もが「ねぇ、〇〇〇が痛いんだけど、どうしたらいいの?」と一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか?その答えに困ったことはないでしょうか?

本記事を読めば、痛みの「根本的な原因」が分かり、あらゆるパターンに適切なアドバイスができるようになります。生理学的な知識から行動変容の促し方も解説していますので、ぜひ痛みの理解を深めて一つステップアップした医療職となりましょう。

今回の記事がおすすめな人

  • そもそも痛みってどういう仕組み?
  • 「痛い」って言われるけど、どうアドバイスしていいか分からない
  • 痛みを簡単に説明できるかっこいい人になりたい

リハビリにおける「痛み」を深掘りする

リハビリの現場では、患者さんの「痛み」が治療効果を大きく左右します。痛くて動けない方や恐怖心で体がこわばってしまう方など、思うようにリハビリが進められない。

このブログでは、痛みの基本的な理解から、リハビリにおける痛みの特殊性、そして痛みにどう向き合い、改善していくかまでを解説します。


1. 痛みとは何か? 基礎知識の再確認

1−1.急性痛と慢性痛の違い

痛みは時間的な分類をすることができます。例えば、怪我をしてすぐに痛みが出る場合と関節がすり減って、何年も痛み続ける場合とで分類が異なってきます。これらは「時間的に軽快するか」、「そうではないか」によって分類され、時間の期限も明記されています。

  • 急性痛
    • 原因が明確な外傷や病気などによる3ヶ月以内の痛み
    • 一過性かつ局所的で、ケガや病気が治ると痛みもなくなる
    • からだの異変を知らせるシグナル、警報としての重要な役割を担っている
  • 慢性痛
    • 治癒に要すると予測される時間を超えて持続する痛み
    • あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛み
    • 脳にまで至る神経システムが関与し、複合的な原因で慢性化
      • 器質的要因(骨の変形、関節障害、姿勢異常、神経の異常など)
      • 心理社会的な要因(目に見えない心理的ストレス、痛み・疾病による利得など)
    • 3〜6ヶ月以上持続する疼痛が妥当

1−2.痛みの「3つの分類」について:根本原因を知る

  • 侵害受容性疼痛
    • 組織の痛みを感知する侵害受容器からの刺激
    • 危険から身を守る警報系として役立っている
    • 大きく、表在痛、深部痛、内臓痛の3つに分類刺される

↓詳しくは下記の記事を参照

  • 神経障害性疼痛
    • 「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」 ※国際疼痛学会
    • 具体的には、神経の損傷(圧迫、絞扼、切断、脱髄)によって生じる
    • 体性感覚神経系の過敏性と下行性疼痛修飾系における抑制系の機能減弱が発症機序となる
  • 心理社会的疼痛
    • 抹消からの痛み刺激が見出しにくく痛みの伝達経路や中枢神経系に器質的病変がなく心理的要因の認められるものをいう
    • 健常者と器質性疼痛患者よりも疼痛の程度が強く、疼痛の感覚的表現や特に情緒的表現に反応しやすい特性があると考えられる
    • 特に慢性疼痛において、この概念は重要視されている。

※痛みの機序についてもっと知りたい方はこちらから確認してください


2. リハビリにおける痛みの特殊性

「リハビリが痛みによって進められない」といったことは、リハビリ職の方なら誰しもが体験したことがあるのではないでしょうか?

痛みの種類によって、対応方法が大きく異なるので、まずはその整理から始めていくことが重要となってきます。

ここでは、リハビリ視点から見た痛みとの向き合い方について解説していきます!

  • リハビリテーションと痛みのジレンマ:
    • 痛みを避けると機能改善が進まない場合がある。
    • 運動した方が良いとわかっていても、痛みの先入観で実行できない
    • 健康な時の状態を思い出せなく、痛みの先にある状態を想像できない

痛みのジレンマに対しては、丁寧な心と身体のケアが必要です。

リハビリとしては、何をどうすれば痛いのか、どの関節を・どの方向に・どれくらい動かしたら痛いのかを分析し、患者さんと共有することで、痛みの理解を深める必要があります。

また、それが、時間的に解決するのか?運動によって解決するのか?精神的なものなのか?方向性を示すことで、安心感を与えることも重要です。

  • 運動器疾患における痛み:
    • 関節、筋肉、骨などの損傷による痛み(例:変形性関節症、スポーツ外傷)。
    • 姿勢や動作パターンと痛みの関係。

どの部位に疼痛があるのかを正確に把握することが大切です。

関節なら、軟骨がすり減っているのか?腱・靭帯的なものか?組織の沈着や石灰化によるものなのか、それによりアプローチ方法が大きく異なってきます。評価・分析が一番重要です。

  • 神経疾患における痛み:
    • 中枢神経系(脳、脊髄)の損傷による痛み(例:脳卒中後の痙性、神経因性疼痛)。
    • 感覚障害と痛みの関連。

基本的には、リハビリによる疼痛緩和が困難な状態です。

運動やストレッチ、感覚入力で改善を図りますが、第一優先は服薬の調整になります。薬の種類が変われば、リハビリでコツコツ積み重ねたものが、一瞬にして変わってしまうことも多くあります。時間的に解決することもありますので、焦らずに関わりましょう。

  • 心因性・社会的要因による痛みの増悪:
    • 不安、ストレス、うつ状態、トラウマなどが痛みに与える影響。
    • 家族や周囲の理解・サポートの重要性。
    • 「気のせい」の痛みではなく、本人が実際に感じている確かな痛み
    • 心理的な要因によって、痛みを抑える脳の働きが弱まったり、痛みに敏感になったりする

痛みの原因が心理的な側面にもあるため、単に痛み止めを使うだけでなく、心と体の両面にアプローチする集学的治療が行われます。

薬物療法: 痛みを和らげる薬だけでなく、抗うつ薬抗不安薬など、心理的な症状を改善することで結果的に痛みを軽減させる薬が使われることがあります。

臨床心理士や作業療法士では、心理療法・カウンセリング認知行動療法などをよく用います。これは、痛みに対する考え方や行動パターンを整理・修正し、痛みにうまく対処できるようにする治療法です。

理学療法:では、症状に応じて、温熱療法や運動療法などが行われることもあります。

ストレス管理・リラクセーション瞑想深呼吸などのリラクセーション技術の学習や、適度な運動によって、ストレスを管理し、脳の痛みを抑える働きを回復させることが目指されます。


3. リハビリテーションにおける痛みの評価とアプローチ

  • 痛みの多角的な評価方法:
    • 問診: 痛みの部位、性質、強さ(NRS/VAS)、時間経過、増悪・寛解因子。
    • 身体所見: 圧痛、可動域、筋力、姿勢、動作分析。
    • 心理社会的評価: 痛みの破局化思考(カタストロフィゼーション)、抑うつ、不安。
  • 痛みに合わせたリハビリテーション戦略:
    • 急性疼痛に対するアプローチ:
      • RICE処置の再確認(REST, ICE, COMPRESSION, ELEVATION)。
      • 早期からの運動介入の重要性。
    • 慢性疼痛に対するアプローチ:
      • 運動療法: 適切な負荷での運動、ストレッチ、筋力トレーニング。
      • 物理療法: 温熱療法、寒冷療法、電気刺激療法(TENSなど)。
      • 徒手療法: 痛みの軽減と機能改善を目指す手技。
      • 認知行動療法: 痛みの捉え方を変え、行動変容を促す。
      • 生活指導・セルフマネジメント: 痛みを管理するための日常生活での工夫。
  • 痛みに合わせた目標設定:
    • 「痛みゼロ」を目指すのではなく、「痛みを管理しながらできることを増やす」という視点。
    • 患者さんとの共同意思決定の重要性(Shared Decision Making)。

4. 痛みを乗り越えるための患者さんへのメッセージ

  • 痛みを「敵」としない考え方:
    • 痛みは身体からのメッセージ。その意味を理解すること。
    • 痛みを必要以上に恐れないこと。
  • リハビリテーションは痛みを乗り越えるためのツール:
    • 専門家(理学療法士、作業療法士など)との協働の重要性。
    • 自宅での自主トレーニングの継続の重要性。
  • 心と体のつながりの理解:
    • ストレス管理、十分な睡眠、バランスの取れた食事の重要性。
    • 趣味や社会活動への参加が痛みの軽減につながる可能性。
  • 希望を持つことの力:
    • 痛みが改善した事例の紹介(可能であれば)。
    • 痛みを抱えながらも、より良い生活を送るためのヒント。

まとめと読者への問いかけ

今回は『痛み』について、医療・リハビリ職種向けに基本的な内容を解説しました。

この記事を読んだあなたは「ねぇ、〇〇が痛いんだけど、どうすれば良い?」その答えに困ることはもう無いでしょう。痛みの「根本的な原因」が分かるあなたは、あらゆるパターンに適切なアドバイスができるようになりました。生理学的な知識から行動変容の促し方まで、あなたの臨床は一つステップアップしました。

最後に、あなた自身に問いかけます。「今日から、あなたの患者さんの痛みを『急性痛・慢性痛』『3つの分類』のどれに当てはめ、どのようなアプローチから開始しますか?」

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